80,000ドル投資!ラオスBTCマイニング、参入から撤退まで・・・の巻!

ラオスのBTCマイニング機器が並ぶ設備内に立つ佐藤大介

もともと、ラオスの安い電力に可能性を感じていました。BTCマイニングは、電気代がコストの大半を占めます。水力発電が多く、一般家庭なら1kWhあたり6円ほど、工業団地で大量に使っても8円ほど。当時の日本はそれぞれ29円、17円ほどでした。ここなら、できるかもしれない!

首都近郊の経済特区へ設備投資80,000ドル、当時約1,100万円を投じて参入し、設備を増強しながら採掘を続けました。それでも今回、撤退を決めました。時間もお金も注いだ事業だから、悔しくないはずがありません。だからこそ、塩漬けにせず、次へ進みます!

電気代1kWh、6円。ここならできるかもしれない!

最初に目を付けたのは、電気代でした。水源が豊富で、水力発電所も多い。法人税が5年間無料になる条件もあり、マイニングの候補地として魅力がありました。

一方で、水力発電には洪水時の不安があり、当時の通信環境も心もとない。安いという一点だけで飛びつける話ではありません。それでも、弱点まで見たうえで「ラオスへ投資したい」という気持ちは残りました。ならば、考え続けるより現地で確かめます!

80,000ドル投資!経済特区で始動!

ラオスの経済特区を案内する看板
大型排気ファンと配線を組み上げるマイニング設備の内部

首都ビエンチャン近郊の経済特区で、事業を始めました。設備投資額は80,000ドル、約1,100万円。暑い国でも、工夫によってクーラーなしで室温20度以下を維持できる環境でした。

安い再生可能エネルギーを使い、サーバーを動かす。数字で考え、現場へ行き、最後は自分で決めました。小さな実験ではありません。まとまった資金を置き、本気で参入しました!

経済特区のゲートを入ると、中国語の看板が並び、管理者も作業員も中国人が中心。さらにラオスを縦断する鉄道へ乗ると、車両も駅も中国式でした。のんびりした国という以前の印象の向こうで、中国資本による開発が一気に進んでいる。その変化のただ中で、設備を動かし始めました。

電気をつくった国の歴史まで、自分の目で見る!

ラオスのナムグム第一水力発電所

実は、私が可能性を感じたラオスの安い電力にも、日本との深い縁があります。ラオスの主要電源は水力発電。その歩みの出発点が、同国初の水力発電所であるナムグム第一水力発電所です。

半世紀以上前、ラオスは内戦のさなかにありました。その危険な状況のなか、日本企業が工事を担い、日本の技術協力と日本を含む各国の資金協力によって、1971年に発電所が完成しました。完成当初は電力の80%をタイへ輸出して貴重な外貨を生み、その後も首都ビエンチャンや工業団地を支えてきました。

安い水力電源は、最初からそこにあったものではありません。危険な時代に現地へ入り、ラオスの未来のために発電所をつくった人たちがいました。マイニング事業でその恩恵を受ける側として、この場所を自分の目で見ておきたいと思い、現地へ足を運びました。

このダム建設を背景にした史実は、日本・ラオス合作映画「ラオス 竜の奇跡」の題材にもなりました。内戦期のラオスへ渡った日本人青年と現地の人々を描く作品です。電力料金の表だけでは見えない日本とラオスの歴史が、ここにはあります。

通貨は45%下落。それでも、人は穏やかに暮らしている。

現地へ長く滞在すると、設備の外にあるラオスの現実も見えてきます。通貨キープはコロナ禍前から45%下落し、以前は1万円で75万キープだったものが、132万キープになっていました。ところが物価も1.5倍から2倍。数字のうえで円の価値が上がっても、単純に得をする話ではありません。

一方で、人々は毎日を楽しみ、困れば周囲に頼り、頼られながら暮らしていました。経済成長だけを物差しにすれば弱点は多い。それでも、人の温かさや生活のゆとりは数字では測れません。事業をする国を、コストの安い場所としてだけ見たくない。現地で人と接するほど、その思いは強くなりました。

人任せにしない。現物を見て判断する!

多数のマイニング機器が並ぶラオスの設備内部
マイニング設備の室温を抑える大型冷却設備

半減期を前に強気な見方が増えていました。しかし暗号資産は値動きが激しい。広告だけを見て現金を預けるのではなく、まず現地へ行き、設備を見て、自分で判断する。それが私の考えでした。

どんな投資も、どんなビジネスも、人任せにして成功するほど甘くありません。設備が動く場所へ入り、運営する人と話し、現物を確かめました。

評価額1億円突破!さらに最新設備を追加!

ラオスの拠点に保管されたANTMINERの機器と箱
追加導入したANTMINER S21を開梱する現地作業員

マイニングで得たBTCの評価額は、1億円を超えました。当時の私の試算では、日本で行えば電力、家賃、人件費が高く逆ざやになる一方、ラオスの運営コストは日本を大きく下回りました。

そこで最新のANTMINER S21を追加。同じ電気代で、演算速度は従来比2.5倍です。うまくいっているときこそ止まらず、設備へ追加投資しました。

水力で採掘する。壮大な実験へ!

BTCは強気相場に入りました。それでも「頭と尻尾はくれてやれ」。最高値で売り抜けようと欲を出しても、相場は思いどおりになりません。

保有していたBTCは現物で、ラオスの水力発電を使って採掘したものです。環境負荷を抑え、ラオスの経済にも関わりながら、通貨の未来をめぐる壮大な実験へ参加している。そんな思いで続けました。

大半を利確。実験を、きちんと結果へ変える!

相場が大きく上昇するなか、ラオスとロシアでマイニングしたBTCの大半を利確しました。設備を動かして終わりではありません。採掘したBTCを現金化し、投じた資金を結果へ変えるところまでが事業です。

価格がさらに上がる可能性はあっても、最高値を当てることはできません。欲を出しすぎず、自分で決めたところで利益を確定しました。

ラオスの正月で、豊かさの意味を考えた。

設備と数字ばかりを見ていたわけではありません。ラオスの新年「ビーマイ」には、地方で仏像へ静かに水を掛け、寺へ参り、幸福や繁栄を願って手首に木綿の糸を結ぶ人々と過ごしました。親戚や友人が集まり、大いに食べて飲む。その輪のなかに入ると、この国の豊かさは一人当たりGDPだけでは見えないと感じます。

ラオス正月ビーマイでにぎわう夜の街
バーシーの白い木綿糸を手首に結び現地の人と祝杯を交わす佐藤大介

チャンスの女神は、前髪しかない!

現地で事業を始める若い日本人や、ラオス人、中国人の実業家とも鍋を囲み、夜遅くまで仕事を語りました。ラオスには、まだ形にしたい仕事があります。中国、台湾、ベトナムの仕事を理由に先延ばしにしていましたが、チャンスの女神は前髪しかない。甘えず、動かなければと思いました。

ラオスで事業を始める日本人経営者と乾杯する佐藤大介
ラオス人や中国人の実業家と囲んだ鍋料理

悔しい。でも、塩漬けも先送りもしない!

それでも今回、BTCマイニング事業から撤退しました。正直に言えば、悔しかった。時間もお金も注ぎ、可能性を信じて動いてきた事業でした。

直接の理由は、ラオス政府による電力価格の引き上げです。現地で事業を続けるなか、中国企業の工業団地への入居が活発になり、電力需要が増えていると感じていました。そうしたなかで政府は電力料金を改定し、公表された経済特区向けの中圧料金も1kWhあたり9.45米セントとなりました。安い電力を前提に組み立てたマイニング事業には、採算が厳しい単価でした。

自分の努力だけでは、政府が決める電力価格を変えられません。だからといって、採算が崩れた事業を希望だけで続けることもしません。迷う時間があるなら、ゼロベースで再構築する。「塩漬け」と「先送り」はしない。悔しさを抱えたままでも、撤退を決めました。

事業から撤退。でも、ラオスへの挑戦は終わらない!

BTCマイニングからは撤退しました。それでも、ラオスへの挑戦まで終わったわけではありません。整っていない部分が多いからこそ、伸び代があり、仕事をつくる余地があります。

参入も、設備増強も、撤退も、自分で現地を見て決めました。失敗を隠さず、経験を次へ持っていく。気持ちを切り替え、ラオスでできる次の挑戦を探します!