無人島の試作からApp Storeへ—WORD MASTER開発記録

iPhone向けゲーム「WORD MASTER」を公開しました。App Storeからダウンロードできます。
これは、最初からWORD MASTERを作る計画があった、という話ではありません。開発を始めた7月18日からApp Storeへ公開するまで、私はずっと中国出張中でした。最初に作ったのは無人島。そこから企画を変え、動かない画面と何度も向き合い、どうにか公開まで持っていった記録です。
昼間の仕事を続けながら、移動の待ち時間やカフェ、ホテルでの夜など、スキマ時間を使って開発しました。WORD MASTERは、まとまった時間が空くのを待たず、Macを開ける場所と時間を拾いながら作ったゲームです。
7月18日 — まずは「iPhone用のゲームは作れますか?」
iPhone用のゲームは作れますか?
ChatGPTへの最初の入力
すべては、ChatGPTへ送ったこの一文から始まりました。仕様書はありません。完成図もありません。まず「作れるのか」を聞く。かなり軽い始まりです。
資料で最初に確認できるのは12時33分。Xcode 26.6を開くと、iOS 26.5の開発環境はまだ入っておらず、8.52GBのコンポーネントをダウンロードするところでした。最初に作ったのはゲームではなく、待ち時間です。

12時44分、Xcodeの新規プロジェクト画面でProduct Nameへ「HajimariIsland」と入力し、InterfaceはSwiftUI、LanguageはSwiftを選びました。島に漂着した主人公が木材と食料を集め、焚き火を作る小さなサバイバルゲームです。この時点で、WORD MASTERは影も形もありません。

もちろん、生成されたコードを貼れば一度で動く、というほど世の中は親切ではありません。12時53分には5件のエラー。15時2分には実行先の設定で止まり、15時4分には6件のエラーで「Build Failed」。エラー画面をChatGPTへ返し、提案された修正を読み、またビルドしました。

記録を見返すと、エラーは5件から6件。増えている。どういうことだ。とはいえ、ここで理由を全部理解してから進もうとすると日が暮れます。コードを読み、直し、動かして確かめる。まずは、その繰り返しです。
15時6分、iPhone 17のシミュレーターに青い海と小さな島が現れました。木材と食料は0、最初の目標は木材を10個集めること。最初の質問から数時間で、ボタンを押すと資源が増えるゲームが動きました。

2分前まで「6 issues」だったのに、もう島が動いている。さっきの6件は何だったのか。細かいことはさておき、最初のプロトタイプ完成です。
7月18日〜19日 — 島は動いた。でも、似すぎていた
あつまれどうぶつの森にそっくりでは?
HajimariIslandを見てChatGPTへ送った入力
動いた画面を見た私の感想は、達成感だけではありませんでした。木を拾い、素材を集める島のゲーム。これはちょっと、知っている人気ゲームに近すぎるのでは。
そうと分かったら方針転換! HajimariIslandを磨くのはやめて、企画そのものを考え直しました。完成前に企画変更。早い。まだ始めて数時間です。
そこで出てきたのが、「お題に合う言葉を撃つ」という案でした。無人島で資源を集める画面から、瞬時に言葉を選ぶ画面へ。同日18時40分ごろのコードには、野菜、果物、動物、魚、乗り物、都道府県など10カテゴリと、スコア、コンボ、FEVERが入っています。島が動いてから約3時間半で、別のゲームの骨格へ切り替わっていました。
19日未明には、正解、不正解、コンボ、FEVERの音とBGMを作りました。8時49分のバックアップには、もう50ステージの設計が残っています。最初の1ステージもまだ怪しいのに、計画だけは50ステージ。気持ちが先に走っています。
17時57分、プロジェクト名はいったん「Mojiute」となり、「動物を撃て!」という最初のステージが動きました。18時8分と14分には、LEVEL 1とLEVEL 2のクリア画面まで進みました。

翌日の画面がこちら。言葉が重なっている。読めません。正解と不正解の判定、移動速度、制限時間、レベルクリアのつながりも未完成でした。19日19時46分の資料で、初めて「WORD MASTER」という名前が確認できます。名前は強そうですが、画面はまだ全然強くありません。
7月20日〜22日 — ホテルとカフェが開発室になった
中国出張中、泊まっていたホテルの横が電子問屋街だったので、激安の外部モニタを買ってつないでみました。安いモニタでも、画面が一枚増えると十分に仕事をします。ホテルの机が、そのまま開発室になりました。

7月20日、青い試作画面を、紫と金、星空、案内役のキャラクターがいる世界へ作り直しました。ホーム、ゲーム開始、失敗、クリアまでをつなぎ、ようやくWORD MASTERらしい見た目がそろい始めました。
21日からは、MASTER MODE、SOUND TEST、ACHIEVEMENTS、COLLECTIONを追加しました。カフェでもXcodeを開き、Collection、実績、保存処理を一つずつ組み立てました。

その22日、単語の一覧だったCollectionを、写真と日記のように読み返せる「MEMORIES」へ発展させました。撃った単語が、あとから記憶として残る構成です。タイトル画面も立ち上がり、アプリらしい輪郭が見えてきました。

この開発で主に使ったのは、ChatGPTとCodexです。私はC言語を書けますし、コードも読めます。でも、一から全部書くと時間がかかります。コードを読めることと、短時間でアプリを一本書けることは、まったく別の話です。
今回は、作りたい動きや画面を日本語で伝え、生成されたSwiftコードを読み、シミュレーターで試し、エラーや直したい点をまた返す進め方を選びました。私自身の入力作業は、ほぼノーコードです。隠しません。むしろ、そこが今回いちばん面白かったところです。
アプリ開発の素人でも、最初の動く形までは本当にサクッと作れました。ここはAIがすごい。ただし、App Storeへ公開するところまでサクッとかというと、全然そんなことはありません。署名、テスト、広告同意、プライバシー。アプリは動いてからも長いのです。
キャラクターや記憶カードの素材にも生成AIを使いました。案内役は、全身、表情、衣装、物語での見せ方、台詞まで一枚の設定画にまとめ、実際の画面へ入れて調整しました。提案や生成物をそのまま採用するのではなく、動かして違和感があればまた直す。AIが速いぶん、試す回数も増えます。楽になったのか忙しくなったのか、少し分かりません。

7月23日〜26日 — 出張先のホテルで、開発を続けた
7月23日午前0時39分。ホテルの机にはビールとMacがあり、深夜も開発画面を開いていました。ゲームの世界は華やかでも、作業は一つずつです。

その後、ゲームの中身とは別のところで止まりました。Xcodeの署名とプロビジョニングが通らず、実機へ配るためにApple Developerへ端末を登録しました。ゲームは動く。でも配れない。ラスボスは、ゲームの外にいました。
25日もホテルで実装を継続。夜食はカップ麺、隣にはコード。きらびやかな星空のゲームを作っていますが、制作現場はかなり地味です。

その後は10レベル・50ステージへ広げ、レベルごとの背景、キャラクター、BGM、失敗・クリア演出を何度も調整しました。26日にはSunoを使って、後半レベルのBGMも試作しました。

通知、広告同意、プライバシー対応にも着手しました。何かを追加すると、新しい警告やビルドエラーが出る。一つ直して実機で試し、また次へ。ゲームのレベルだけでなく、開発者側のレベルも上げられている気分でした。
7月27日〜30日 — 845語。数字は正直です
7月28日、ゲーム内の開始、クリア、失敗、カード解放などで使う403件のメッセージをCSVで管理する形にしました。403件。誰がそんなに増やしたのか。私です。
画面のMEMORIESは、WORDS 99/845、MEMORIES 18/134。見た目はかなり整ってきましたが、数字は正直です。空いたカードの多さが、そのまま残り作業の量でした。

その29日には、レベルごとの物語を実機で確認しました。単語を撃つだけで終わらせず、案内役と一緒に記憶を集めていく理由を、ステージの間に重ねました。

ゲーム画面を動かしながら、出題、演出、素材、コードを照合。最終的に、100テーマ・845語、134の記憶、34の実績を持つ構成になりました。数字だけ見ると立派です。作業量として見ると、ちょっと目をそらしたくなります。

29日の夜にVersion 1.0の最初のiOS App Archiveを作り、30日にはサポートページ、プライバシーポリシー、App Store用の紹介画像を整えました。ゲームが動けば終わり、ではありません。公開するには、説明するページも必要でした。
8月6日 — 無人島からApp Storeへ
8月6日、App Store Connectでバージョン1.0が「配信準備完了」になり、WORD MASTERの製品ページを確認しました。Xcodeを入れた7月18日から約3週間。無人島の試作から始まったコードが、ようやく他の人に触ってもらえるアプリになりました。

完成したWORD MASTERは、お題に合う文字を狙うゲームです。10レベル・50ステージを進みながら、100テーマ・845語を集め、134の記憶と34の実績を開いていきます。通常ステージの先には、Category ChallengeとMASTER MODEも入れました。最初の質問は「作れますか?」。答えは、どうやら「作れました」です。
8月14日〜16日 — 公開後も、伝え方を作る
公開して終わり、ではありませんでした。8月14日から16日にかけて、ゲーム画面、物語、MEMORIES、MASTER MODEを一枚で伝える告知画像を作りました。日本語版に加えて、繁体字で紹介する素材も用意しました。

遊びを作ることと、その遊びを初めて見る人に伝えることは別の仕事です。告知画像では、WORD MASTERの「撃つ」「集める」「物語がひらく」の三つを軸に構成しました。App Storeがゴールかと思ったら、今度は説明のスタートでした。
完成ではなく、公開できる最初の形
振り返ると、一直線の開発ではありませんでした。最初の企画を手放し、表示崩れを直し、署名で止まり、音と文章を足し、公開のためのページまで作りました。残っているスクリーンショットを見ると、完成画面より、途中で迷っている画面のほうが多くあります。まあ、開発記録とはそういうものです。
ChatGPTとCodexを使えば、専門家でなくても最初のプロトタイプまではサクッと進められます。ただ、何を作るかを決め、動きを見て違和感を言葉にし、公開できる状態か確かめるのは人の仕事でした。ほぼノーコードでも、ほぼノーワークではありません。
それでも、一つずつ動く形にしてApp Storeへ届けられました。WORD MASTERは、完成品というより、公開できる最初の形です。まずは、ここまでを今回の区切りとして記録しておきます。
WORD MASTERは、App Storeからダウンロードできます。